よ! 女の子のこととなると、やけにつむじを曲げて、目のかたきにしているから、こういうことになるんだ。これには三ところしきゃけえてねえが、きょうのふた口を入れると、しめて八人、きゅうっと抱きしめられて、つるりとなでられて、するするとしごきを抜きとられているんですよ」
「そんなことをきいているんじゃねえんだよ。ふところ日記だか、へそ日記だか知らねえが、おまえさんのそのとらの巻きにはな――」
「いいえ、だんな! うるせえ! しゃべりなさんな! きょうはおらのほうが鼻がたけえんだ。事のしだいによっちゃ後世までも残るかもしれねえおらがのこの日記を、へそ日記とは何がなんですかよ! 毎日毎日、丹念に女の子の顔造作までも書き止めておいたからこそ、いざというときになって物の役にたつじゃござんせんか。口幅ったいことはいってもらいますまいよ」
「ウフフ。それが勘どころをはずれているというんだ。大きに丹念に書いたのはいいが、丹念なところは女の子の顔ばかりで、ホシの野郎はどんなやつか、肝心かなめの下手人の人相書きは、毛筋ほども書き止めていらっしゃらねえじゃねえかよ、だいじなことが抜けているというな、そのことなん
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