に、歌も踊りもずっといきに砕けて、三味線《しゃみせん》太鼓に合わせながら、エイサッサ、コラサノサッサと婉《えん》になまめかしく舞い狂っているのです。
「おつだね。そろいのあの腰の江戸紫がおつですよ。ね、ちょいと。え! だんな!」
「ひとり足りねえようだな」
「なんです、なんです。何がひとり足りねえんですかい」
「しごきも二十五本、手ぬぐいも二十五本、両方同じ数をそろえて加賀家へ納めたと紅徳のおやじがいったじゃねえかよ。だのに、二十四人しきゃいねえから、ひとり足りねえといってるんだ。ちっとそれが気になるが、まあいいや。ひと目に手踊りの見物できるような場所を選んで、早く店を開きなよ」
「話せるね。むっつりだんなになっているときゃしゃくにさわるだんなだが、こういうことになるとにっこりだんなになるんだから、うれしいんですよ。おらがまた気のきくたちでね。おおかた筋書きゃこうくるだろうと、出がけに敷き物をちゃんと用意してきたんだ。へえ、お待ちどうさま。そちらがうずら、こちらが平土間、見物席ゃよりどりお好みしだいですよ」
どっかりすわると、不思議です。さっそくことばどおり手踊り見物でもやるかと思い
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