わい! 解けんわい! この人形のなぞばかりは、なんとしても解けぬ。自害にちげえねえんだ。火口一つより出はいりする口はねえ、その口を中から塗りこめてあったからにゃ、自害にちげえねえんだ。だのに、だのに、くやしいな! 伝六ッ。――みろ! この人形を、とっくりとみろ!」
「み、みているんですよ。そ、そんなに悲しそうな声でおこらなくとも、ちゃんと見ているんですよ」
「見たら、おめえにだってもわかるはずだ。ワガ姿ヲ写ス、弥七郎作と銘が入れてあるんだ。女じゃねえてめえの姿だ。その人形を抱いて共焼きに蒸され死にした弥七郎の了見がわからねえんだ。女なら考えようもある。解きようもある。好いた女にそでにされて、慕っても慕っても思いが通らねえので、せめてもその女の姿を写しとって、心中がわりに蒸され死にしたってえなら話もわかるが、そうじゃねえんだ。てめえの姿を抱いて共焼きになってるんだ。くやしいな! 伝六。わからねえ! 解けねえ、このなぞばかりゃ解けねえよ!」
「だ、だんなにわからねえものなら、あっしに、わたしに、と、解けるはずアねえんですよ。――生まれ変わりてえな。知恵の袋をうんとこしこたま仕込んで、今ここ
前へ
次へ
全54ページ中47ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング