変わり方にしたたか肝をつぶしたらしく、すっかり鳴りをひそめたままでした。
 なぞはいたずらに濃くなるばかり。
 ただ、いぶかしいのは生き身もろとも、共焼きにしたその青焼き人形です。ワガ姿ヲ写ス、弥七郎作とある銘もなぞ、共焼きもなぞ、色もなぞ。その色がまたぶきみなほどにもさえざえと美しくさえかえって、青みに青み、澄みに澄んだ群青色が、人の心、人の魂をしいんと引き締め、引き入れるような美しさであった。
 声はない……。
 四半刻《しはんとき》!
 声はない……。
 半刻!
 声はない……。
 しんしんとただ気味わるく静まりかえって、なんの声も放たぬなぞの青人形に注がれている三人の目が、六つのひとみが、怪しく輝き、異様に光り、とんきょうに輝きながら、ぶきみにきらめいているばかりです。――いや。やがて、ぱらりと名人の鬢《びん》の毛が、三筋、四筋、六筋、七筋、青白く思案に沈んだそのほおにみだれかかりました。――とたん、かすかにそれがゆれたかと見えるや同時に、はらわたをふり絞ったような声が、悲壮に、うめくように放たれました。
「わからぬ! わからぬ! くやしいな! 伝六ッ」
「…………」
「解けん
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