でした。
自分といっしょに焼いたにちがいない!
形もまた弥七郎自身の面影を写しとったのではないかと思われる、意味ありげな陶工姿の立ち人形でした。否! 台じりを返してみると、紛れもなく銘があるのです。ワガ姿ヲ写ス、――泥斎門人弥七郎作、というきざみ字が見えました。
「なぞはこれだな! よしッ、伝あにい!」
ひしとかいいだくようにその青人形を胸に抱いて、さっと身を起こすと、静かに命じたことです。
「野郎をつかまえろッ。粂五郎のやつが、なぞのかぎを握っているにちげえねんだ。跡を追いかけろッ」
「跡を追いかけろといったって、とうに野郎はもうつっ走ったんですよ。ばかばかしい。だから、あっしがさっきあわてて呼んだんじゃねえですか。今ごろになって、そんな無理をおっしゃったっても知りませんよ」
「あいもかわらず血のめぐりが鷹揚《おうよう》だな。おいらのやることにむだはねえんだ。これをみろ。きょうは何が降ってると思ってるんだい。よく目をあけてこれを見ろよ」
おちつきはらいながら表へ立って、笑《え》ましげにほほえみながら、静かに指さしたのは庭一面、道一面を埋めつくしている深い雪です。いや、銀白のそ
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