の足首がぶきみにぬッと窯の口からのぞいていたからです。
「あれの足だ! 弥七郎の足だ! 泥斎のこの目に狂いはござりませぬ! まさしく、弥七郎めの足首でござります。ど、どう、どうしたのでござりましょう! あれが、あの男が蒸し焼きになっているとは、どうしたのでござりましょう」
「どうでもない。たった一つの出入り口の火口が内側から塗りこめられてあったとすりゃ、考えてみるまでもねえことよ、まさにまさしく自害だよ」
「えッ。自害! 自、自害でござりまするか! あの男が、弥七郎が、自害をしたというのでござりまするか!」
泥斎のおどろきがつづけられているとき、
「あッ。ちくしょうッいけねえ! いけねえ! 野郎待ちやがれッ。だんな、だんな」
うちうろたえながら、伝六が不意にけたたましい声をあげました。
「野郎が、野郎が、ね、ほら! せがれの青僧が、粂五郎が逃げ出しやがったんですよ!」
「なにッ」
「ね、ほら! ほら! あのとおりまっしぐらに逃げ出しやがったんです。逐電するからにゃ、野郎め何かうしろぐれえことがあるにちげえねえんだ。てつだっておくんなせえよ。野郎足がはええんだ。いっしょに追いかけてお
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