なとお捜しくだされませ。お案内いたしまするでござります」
「さすがは名工、肝に鍛えができているとみえて、なかなかに神妙のいたりだ。弥七郎が寝起きしていた居間はどこかい」
「ところが、変な男といえば変な男でござります。あちらにあれのためのへやが一つ取ってあるのに、人形の中へ寝るが好きじゃと申して、毎夜この仕事べやに寝起きしておりましてござります」
「ほほう。のらくら者で、仕事に魂の打ち込めぬなまけ者が、焼き人形の中に寝るが好きとは、なにさま変わっておるな。だいぶ色焼きのみごとな人形が並んでいるじゃないかよ。宗七焼きの粋というしろものを、しみじみ拝見するかね」
いいつつ、あちらこちらとたなからたなへ見ながめていたその目に、はしなくも映ったのは、ひときわできばえのすぐれた三体の人形です。珍しいことに、その三体が三体共に、ただひと色のじつにすっきりしたいやみのない群青《ぐんじょう》色でした。
しかし、よくよく見比べると、三体の焼きぐあい、色付けの仕上がり、細工のできばえに、あきらかな優劣が見えるのです。右がいちばん上でき、まんなかがそれにつづき、左端のがもっともふできでした。
「こぶ[#「
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