おっかねえだんながじきじきにお出ましなんだよ。ね! おい! わけえの! 年寄り! 気をつけてものをいいなよ。奉公に上がっていたといや弟子《でし》にちげえねえんだ。その弟子の弥七郎は、どけえいったのかい」
えッ――というように、不意を打たれて、ギョッとなりながら見上げたふたりを、じろり見すくめた名人の目のつけどころはまた、おのずから伝六なぞと格が違うのです。目の動き、顔いろのそよぎ、心の芯《しん》に何ぞ狼狽《ろうばい》しているところはないかと、その鋭く烱々《けいけい》と光るまなざしでじいっと両名を見すくめました。
見ると老人は五十五、六。左耳下にこぶがあるからには、まさしくそれが泥斎にちがいない。しかし、しいんとおちついてなんのうろたえも見せないのです。そのうえ、どことはなく人品|骨柄《こつがら》に渋みがあって鍛えられたところがあって、寂《さ》び冴《さ》えすらもがたたえられて、さすがは名取りの焼き人形師と思われる名工ぶりでした。
隣にうずくまっているのは二十五、六。弟子か?――いや、そうではない。どことはなし泥斎に面ざしの似通ったところがあるのを見ると、まさしくせがれにちがいないの
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