どいったせりふだが、だから女はいつまでたっても、魔物だっていうんですよ。――伝あにい! 源之丞だか弁之丞だか知らねえが、一の弟子《でし》とやらをここへしょっぴいてきな」
おどおどしながらいざなわれてきた源之丞を、ぎろりと鋭くにらみすえると、しみじみとたしなめるようにいった訓戒がまたすてきです。
「ちっとこれから気をつけろい! 武道熱心は見あげたもんだが、堅いばかりが能じゃねえんだ。ヤットウ、チャンバラ面小手と年じゅう血走った目ばかりさせておるから、こんなことにもなるんだよ。みりゃ、お菊さんなかなかに上玉のべっぴんさんだ。そのべっぴんさんが、おまえさんへの片思いゆえに人殺しまでもしたじゃねえかよ。のちのちもあるこった。少しこれから気をつけてな、堅く柔らかくほっかりと、蒸しかげんもほどのいい人間になりなせえよ。――菊代さんへ。慈悲をかけてやりてえが人殺しの罪はまぬかれねえ。寒の中をおきのどくだが、当分伝馬町でお涼みなせえよ。そのかわり、ご牢《ろう》払いになればまた源之丞どのとやらも情にほだされて、二世かけましょうと、うれしいことばもろともお迎えに参りましょうからね。じゃ、伝あにい! いつ
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