ってみたら、やっぱり話のとおり、須田町の町のまんなかにぽつりと置いてあるんですよ。湯島の下にもね。それから水戸さまのお屋敷前の濠《ほり》ばたにも、気味わるくぽつりと置いてあるんだ。そのうえなお先にもぽつりぽつりと同じようなのが置いてあるというんでね、さっそく捜しさがし行ってみるてえと、なるほどあるんですよ。牛込ご門の前のところにやはり一丁、それからぐるっと濠を回って、四ツ谷ご門のめえにも同じく一丁、あれからしばらくとだえているんで、もうそれっきりどこにもあるめえと思ったら、土橋ご門の前の向こうかどにやっぱり一丁置いてあるんですよ。それから先はもうどっちへ行っても、捜してみても人にきいても見つからねえのでね、やれやれと思ってさっそくお知らせに飛んできたんですが、いずれにしても、こいつただごとじゃねえですぜ。駕籠はからっぽであっても、人足がついておったら、ぽつりぽつりとどこにいくつ置いてあってもいっこうに不思議はねえが、乗り手もかつぎ手もまるで人っけのねえ気味のわるいから駕籠ばかりがひょくりひょくりと、それもよく考えてみりゃお城のまわりなんだ。日本橋から土橋までぐるりと大きく回って、なぞな
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