、どうでえ、わけえの、おいらもさいころは大好きなんだ。おめえがべらべらっとひと口しゃべりゃ、だんなばくちのいいカモばかりそろっているたまりべやを教えてやるが、どこのだれから親分が頼まれたのか、ないしょにしゃべっちまいなよと、いろけたっぷりににおわしたらね。えっへへ――」
「しゃべったのかい」
「みんごとしゃべったからこそ、えっへへ、おてがらだというんですよ。じつあ、あの町奴め、さかさねこの伝兵衛《でんべえ》とかいう野郎でね。ねぐらがまた大笑いなことに、八丁堀とは目と鼻の日本橋|馬喰町《ばくろうちょう》の大根|河岸《がし》だとぬかしゃがるんだ。そこへ行きゃ、七つの駕籠かきどもが数珠《じゅず》つなぎになってころがっているはずだからね。野郎どもを締めあげりゃ、頼み手はいうまでもないこと、何もかもなぞなぞの正体がわかるというんですよ。どんなもんです。伝六様だっても、ときどきは味をやるんですよ」
「なるほど、味なてがらかもしれねえ。こうなりゃおまえさんまかせだ、橙を落とさねえようにして、はええところ伝兵衛とやらのねぐらへ案内してみな」
得たりや応とばかり、鼻高々として伝六が案内していったのは、
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