めまい。しかし――」
「なんでござります」
「これはなんじゃ。この畳《たとう》紙をぞうりの中にはさんでおいたは、なんのいたずらじゃ」
「それはその――」
「それはその、どうしたというのじゃ」
「なんともはや面目ござりませぬ。かようなことを申しましたら、さぞかしお笑いでござりましょうが、相手は子どものことゆえ、なんぞもったいつけねば納得いくまいと存じまして、ぞうりは足にはくものであることから思いつき、母ごの行くえにも早く足がついて居どころがわかりますようにと、しかつめらしく畳御幣をはさんで、まくらにさせるよういいつけたのでござります」
「ちぇッ、なんでえ、なんでえ! 子どもだましにもほどがあらあ。おいら、なんのまじないだろうと、どのくれえ首をひねったかわからねえじゃねえか。みろ。おかげでこんなに肩が凝りやがった。これからもあるこったから気をつけな」
 聞いて、なにごとによらずおにぎやかしい伝あにいはたいそうもなくふきげんのご様子でしたが、名人はさわやかに微笑を浮かべたままでした。ぞうりは足にはくものゆえ、母よ早く帰れと書いた畳御幣をその間にはさんでおいたら、たずねる人に早く足がつくだろう
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