ござりましたとて、天からお米のなる木が降ってくるはずもなし、二つになったばかりのその子のような赤子があるうえに、としはもいかぬこんなきょうだいふたりまでもかかえて、なに一つ身に商売のない女ふぜいが、その日その日を楽々と送っていかれるわけのものではござりませぬ。それゆえ、とうとうせっぱつまってのことでござりましょう。日ごろはただの一度行き来したことのない親類じゃが、なんでも板橋の宿の先とやらに遠い身寄りの者がひとりあるから、そこへ金策にいってくるとか申しましてな、赤子をその姉娘にあずけ、子どもたちばかり三人を残しておいて、十日ほどまえのかれこれもう四ツ近い夜ふけに、母親がたったひとりで、ふらふらと出かけていったのでござりますよ。ところが――」
「待てッ、待てッ、ちょっと待てッ」
「は……?」
「ちとおかしいな」
「何がおかしいのでござります」
「ここから板橋の先までといえば、一里や二里ではきかぬ道のりじゃ。にもかかわらず、女ひとりが四ツ近いというようなそんな夜ふけの刻限に、それもがんぜない子どもばかりを残してふらふらと出かけたというは、ちと不審じゃな」
「そうでござります、そうでござりま
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