とき》参りをするところだとかなんだとか気味のわるいことをいっておりますが、どうしたことか、その妙見さまがまたたいそうもなくひとり者をごひいきにしてくださるとかいう評判だからね。事のついでにと思ってお参りに行くてえと、ぶらり――下がっているんですよ」
「なんだよ。何がぶらりとさがっているんだ」
「ほら、なんとかいいましたっけね。鈴でなし、鉦《かね》でなし、よくほうぼうのほこらやお堂の軒先につりさがっているじゃござんせんか。青や赤やのいろいろ取り交ぜた布切れがたらりとさがっておって、それをひっぱるとガチャガチャボンボンと変な音を出すものがありまさね」
「わにぐちか」
「そうそう、わにぐちですよ。そのわにぐちの布がぶらりとさがっているまっ下にね、死んでいるんだ、死んでいるんだ、さっき申した二本ざしのりっぱなお侍がね、ぐさッとのど笛をえぐられて、長くなっていたんですよ。だから、こいつあたいへん、何をおいてもまずだんなにお知らせしなくちゃと思ってね、さっそく大急ぎにいましがた駕籠《かご》でけえったんですが、それにしても死に方が気に入らねえんだ。いかに妙見さまは弁天さまのごきょうだいにしたって、た
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