どういう男をのろっているか知らねえが、手を替え人を替えて幾晩ものろいつづけているところを見ると、丑《うし》の時参りの一味徒党もおろそかな人数じゃあるめえし、そいつらののど笛をねらっているやつも並みたいていのくせ者じゃねえよ。あば敬の様子はどんなだったか探っちゃこねえかい」
「それですよ、それですよ。そいつがどうも事重大なんだ。ゆうべ山下でも出会ったとおり、ああしてつじ番所の小役人まで狩り出して、江戸じゅう残らずへ大網を張ったはいいが、獲物はこそどろが三匹と、つつもたせの流れがひと組みと、ろくなやつあかからねえんでね。やつも少しあわを吹いたところへ、けさのこの生き埋め行者の一件が耳にはいったんだ。だからね、あばたこそあっても、さすがは敬四郎ですよ。のど切り騒動が申し合わせてほこらやお堂にばかりあるところから、やつめ、とうとう眼《がん》をつけたとみえて、今夜から手口を変えて総江戸残らずのお堂とほこらへ伏せ網を張るというんですよ」
「そいつあさいわいだ。なにもおいらは意地わるく立ちまわって、てがらをひとり占めにしてえわけじゃねえんだからな。人手を使っておてつだいくださるたア、願ったりかなった
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