てたたき直さなきゃ直らねえとみえるよ。けんかになっちゃなるめえと思ったからこそ、わざわざおもといじりまでもやって、あとからゆっくり行こうと遠慮していたのに、すき見するとはなんのざまでえ。ひとからかい、からかってやるから、ついてきな」
微笑しながら出ていくと、いたって静かにいったものです。
「これはこれは、おそろいでござりまするな。たいそうご熱心におのぞきのようでござりまするが、うちの庭に温泉でも吹き出しましたかな」
めんくらったのはあば敬とその一党でした。不意をうたれてまごまごしているのをしり目にかけながら、ゆるやかにあごをなでると、なんと思ったか聞こえよがしに伝六へ命じました。
「練塀小路から先にしようぜ。大急ぎにな、二丁だぜ」
ひらり乗るといっさん走り。――あとにつづいてあば敬とその一党も、逃がしてならじというように、三丁の駕籠をつらねながら、えいほうと韋駄天《いだてん》に追いかけました。
2
かくして、追いつ追われつしながら行くこと十町。
このまましつこく尾行されたら、少しく事がめんどうになりそうに思われましたが、こういう場合になると、伝六太鼓もなかなかに
前へ
次へ
全69ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング