解くすべてのかぎは、まさにその手首に見えるくくりあとだよ。こうなりゃ、もうおれの眼はすごいんだ。これだけのべっぴんが、ただ死ぬはずはねえ。何かいわくがあって江戸紫の命を断ったにちげえねえから、家捜しやってみな」
「ちくしょうッ、なんとも気に入ったことをおっしゃいましたね。こうなりゃおれの眼はすごいんだとは、またいかにもうれしくなるせりふじゃござんせんか。べらぼうめ。おいらの眼だっても、こうなりゃなかなかにすごくなるんだ。ほんとに、どうするか覚えてろ」
捜しているうちに、はしなくも見つけ出したのは、そこの縁起だなの上になにごとか秘密を包みながら、子細ありげに置かれてあった変なものです。まことに変なものという以外いいようのないほども変なものです。
「ざまあみろ。ざまあみろ! あるんですよ。あるんですよ! ここに変なものがあるんですよ。あッ、いけねえ。だんな、だんな。血だ、血だ。血がしみ出ている紙包みですぜ」
「なに!」
近よってのぞいてみると、いかさま、ふところ紙の一束の外にまで、べっとりと黒ずんだ血がにじみ出た、いぶかしい小さな包みがあるのです。しかも、それが不思議なものの前に、なぞ
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