て、これは偽物じゃとおっしゃりましたゆえ、てまえどももぎょうてんしてお尋ねいたしましたら、何から何までほんものそっくりにまねて作ってはあるが、着付けの金襴《きんらん》の生地がまがいものじゃ、うちから預けた雛は二百年このかた伝わっている品で、一寸十両もする古金襴地のはずなのに、これは今できの安い京金襴じゃとおっしゃいましたゆえ、わたくしどもも生地を調べてみて、ようやくそれと知った始末でおじゃります」
 こころみに取りあげて手に触れてみると、いかさまのりけたくさんの手ざわりからしてがよろしくない駄金襴《だきんらん》です。そのうえ、雛も重い。二百年このかたの古雛なら、もっと土も枯れて目方も軽くなければならないはずなのに、粘土が新しくてまだよくかわききっていないためか、案外なくらいに重いのです。
「ほほう。なるほど、おっしゃるとおり、近ごろでこしらえた新品のようでござりまするな。そういたしますると、すり替えられた真物というは、よほどのご名品でござりましたろうな」
「ええ、もう名品も名品も、内藤家の古島雛と評判されている逸品じゃそうにおじゃります」
「なるほど、さようでござりましたか。いや、それ
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