っちがほしいおばあさんだよ」
「…………?」
「ちぇッ、まだわからねえのかい。おまえの口ぐせじゃねえが、ほんとうにちぇッといいたくなるよ。今の二匹は、同じいかさま師の一家にちげえねえんだ、やつらの仲間がうしろに隠れて、何か細工をしているに相違ねえよ、舌をかみ切った野郎が白状しねえのもそれなんだ。やつら遊び人が親分や兄弟に災難のふりかかることなら、なにごとによらずいっさい口を割らねえしきたりゃア、おめえだっても知っているはずじゃねえか。まごまごしていると、見えなくなっちまうぜ」
 わかりすぎるほどわかりすぎたとみえて、珍しくおしゃべり屋がものをいわなかった。そのかわりに、いっさん走り。尾行となるとこやつの一芸で、伝六がまた名人です。
 遠いだろうとつけていったところが、目と鼻の本願寺裏でした。しかも、ひと目に丁半師のうちと思われる一軒へ消えていくと、ふたりの注進によって、ほどたたぬまに荷物としながら表へかつぎ出してきたのは、怪しくも大きなつづらです。まわりに六、七人の長わきざしがぐるりと取り巻き、それらのうしろにいるやつが、何のそれがしという親分にちがいないつらだましい精悍《せいかん》な
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