けるんです」
「知れたこった。行くえしれずのおばあさんを堀り出しに行くんだよ。その玉さえ拾ってくりゃ、白状しねえで舌をかみ切ったなぞの玉手箱も、ひとりでにばらりと解けらあ。さあ、駕籠《かご》だッ」
二丁並べて松の内正月二日の初荷の町を、われらも初出とばかり、ひたひたといっさん走り。しかも、目ざしたところは浅草の奥山のたった一軒しかない玉ころがし屋です。
5
降りると、なに思ったか用意の雪ずきんをすっぽりやって、堅くおしゃべり屋の鳴り太鼓を封じました。
「いいかい、ここがいかさまばくちのあの野郎がやっているうちのはずだ。ちっとこれから奇妙なことをするから、いつものように鳴っちゃだめだぜ。ごろごろと遠鳴りさせても、今度は本気でおこるよ」
念を押しておくと、ずいとはいっていって、店番をしていた者に、ふいっといいました。
「五両かかっても、十両かかってもいいんだから、ゆっくり遊ばせてもらいますぜ」
鷹揚《おうよう》にいいながら、赤、白、黄なぞたくさん並んでいた玉の中からむぞうさにその一つを手にすると、さっそくごろごろところがしはじめました。もちろんご存じのことと思いますが
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