ところへ、さいころは見つかる、玉ころがしの玉は出てくる、そのうえに下町へ嫁にいっているといったようだが、敬公のしょっぴきに行ったところもその下町じゃねえのかい」
「そうですよ、そうなんですよ。それも、奥山のたった一軒きりきゃねえその玉ころがし屋が、下手人の野郎のうちだといってね、おおいばりに出かけていったというんですよ」
「そうだろう。女はたぶん亭主と同罪じゃあるめえが、それまでは聞かなかったかい」
「いいえ、聞きました、聞きました。泣いて亭主をいさめたのに、悪党めどうしてもきかずに飛び出したんで、せめても甥《おい》たちの菩提《ぼだい》を弔おうと、ああしてさっき子どものむくろにすがりついたというんですよ。だから、もう死ぬ死ぬといってね、ほら、あのとおり――」
「なるほど、泣いているらしいな。それならひとつ――」
疑問なのは老婆なのだ。いや、その行くえと、なにゆえにいなくなっているか、問題はそれです。もちろん、その場になぞを解くべく行くえ探索の行動を開始するだろうと思われたのに、何思ったか名人は反対でした。
「では、ひと寝入りするかな」
あごをなでなでお番所の控え室へはいろうとしたと
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