でも引いたやつが置き忘れていったか、子どもにねだられてくれたものか、どっちにしてもただものじゃねえんだから、これに目をつけたとて何が不思議かい。そっちの玉ころがしの玉にしたってそうじゃねえか。赤や黄のきれいな色がついているから、子どもはたいせつなおもちゃだと思ってしまっておいたかもしれねえが、どいつがどうしてこんな品をくれたか、それも眼《がん》のつけめなんだ。このうちの家族の様子を探りゃ、おおかた目鼻もつこうというもんだから、とち狂っていずと、はよういってきな」
「ちげえねえ! ちげえねえ! べらぼうめ! ざまあみろい! ええと――、さてな、どこで洗ってきたものかな」
まごまごしながら表へ駆けだしていった様子でしたが、ほど経て帰ってくると、
「変ですぜ! 変ですぜ! 町名主から聞き出してきたんですがね、ちっとこのうちは変ですぜ!」
うろたえて報告しようとしたのを、押えてずばりと右門流でした。
「変だというのは、たぶんあの子どもの親たちのことだろう。父親も母親もそろって去年の十二月十二日に死んだといやしなかったか」
「そうです! そうです! そのとおりなんだが、気味がわるいね、どうし
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