なきゃ両国から袈裟切り太夫をつれてきて、けだもの責めにしてやってもいいが、それまでホシをさしてもまだしらをきるつもりかい」
「…………」
「手間のかかる親方だな! じゃ、いっそことのついでに仙市座頭を呼びよせて、無実の罪を着せようとした一件を対決させてみせようかッ」
それまでぴしぴしと右門流にたたみかけられたのでは、いかなる金八も責め落とされたのは当然なことです。
「あいすみませぬ。何もかもおめがねどおりてまえの仕組んだ狂言でござります」
「そうだろう。このきのどくなめに会わされたおかみさんと年が違いすぎるところから察するに、おそらくおまえはあとから入り婿にへえったやつとにらんでいるが、違ったか!」
「そのとおりでござります。ゆうべ鳴らした鼓のことまでお調べがついているご様子でござりますゆえ、隠さずに昔の素姓も申しますが、じつはお恥ずかしながら、さる使いをなりわいにいたしておりました卑しい身分の者でござります。それで因果とでも申しますか、少しばかり人がましいつらをしておりますんで――と申しちゃうぬぼれているようでございますが、どうしたことやら、こちらのこの仏がてまえを気に入ったと申し
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