るんだ。きさまは河童権があんどんへ残していった文句覚えてねえのか。江戸の小町娘は気をつけろ、比丘尼小町に食われちまうぞと、気味のわるい文句があったじゃねえか」
「ちぇッ、そうですかい。じゃ、あんな文句が残っているからにゃ、どこかほかでもう比丘尼小町とやらにやられた娘があるだろうと眼がついたんで、わざわざ小町改めをしたんですかい」
「決まってらあ。いま来たあのおやじどもを見ろ。なにか思いもよらねえいわくがあるとみえて、おどおどうろたえているじゃねえか。だから、もう小町娘を無事に連れてきた親どもにゃ用はねえんだ。早く引きさがるよう申し伝えろッ」
「これだからな。化かされまい、化かされまいと思っていても、じつにだんなときちゃあざやかだからな、せっかく堪能できると油が乗り出してきたのに、しかたがねえや。じゃ、辰ッ、遠慮しねえでついたての陰から首を出しなよ」
「まてまてッ」
「えッ?」
「ここに十金あるから、帰りの乗り物代に分けてつかわせ。暑いさなかをご苦労だった、このうえとも娘どもはたいせつにしろと、ねんごろにいたわってやれよ」
「いちいちとやることにそつがねえや。おい、辰ッ。背のちっちぇえの
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