が恥ずかしかったら、せいぜい伸び上がってついてきなよ」
伝六、辰の配下たちが、そのまま帰してしまうのを惜しそうにひとりひとり手配したのを見すましてから、やおら名人はひざを進めると、いわくありげなふたりの町人に呼びかけました。
「遠慮はいらぬ。心配ごとがあらば、早く申し立てろ」
「へえい……」
「たぶん、両名とも娘たちの身の上に、何か異変があっての心配顔と察するが、どうじゃ、違うか」
「お察しのとおりなんでございまするが、でも、ちっと話がこみ入っているんでございますよ。じつは、ゆうべおそくに町名主がおみえなさいまして、この町内で小町娘と評判されているのはおまえのところのお千恵だけじゃ、しかじかかくかくでお番所から不意にお呼び出しがかかってきたから、四ツまでに出頭しろと、このように申されましたんで、なんのことやら、では参りましょうと、さっそくただいま、預けておいたところへ娘を連れに参りましたら、どうしたのでござりましょう、その娘がふいっと行くえ知れずになったのでござりますよ」
「なに! 預けておいたとな! 聞き捨てならぬことばじゃ。いつ、どうして、どこへ預けておいたか!」
「それがどうも
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