なにかあっしも涼しくなるだろうと思いましてね。――よッ。いううちに、今はいってきたべっぴん、だんなのほうをながめて、まっかになりましたぜ。助からねえな。おれなんかのほうは、半分だっても見当つけてくださる小町ゃねえんだからね」
 それがまた小声だけに、うるさいことは並みたいていでないので。しかし、名人はただ黙々。集まってきた小町美人のほうへはまったく目もくれないで、何を待つのか、しきりと出入り口にばかり烱々《けいけい》と注意を放っていたようでしたが、と――そのとき、おどおどとしながらうろたえ顔でお白州に姿を見せた者は、裕福らしい町家のおやじふたりです。と見ると、じつに右門流の中の右門流でした。
「よしッ。いま来たふたりのおやじがたいせつなお客だ。あとの者たちは、もう目ざわりだから、引きさがるように申し伝えろッ」
「…………」
「何をパチクリやってるんだ。幾人来たか数えてもみないが、あとの小町娘たちにはもうご用済みだからと申し伝えて、引きさがるように手配しろよ」
「…………」
「…………※[#疑問符感嘆符、1−8−77]」
「血のめぐりのわりいやつだな。いつまでパチクリやってぽかんとしてい
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