、些少《さしょう》ながらご進物としてさし上げそうろうまま、一服盛りにでもご手料理くだされたくそうろう
[#ここで字下げ終わり]
[#地付き]頓首《とんしゅ》再拝」
したため終わると、伝六、辰に命令一下。
「近所の自身番へこいつをしょっぴいていって、軍鶏駕籠《とうまるかご》へぶちこんでから、この手紙をつけて尾州様の上屋敷へ届けるようにいってきな」
そして、ふたりの配下が命令どおりに手配したのを見すましながら、あごをなでなでゆうぜんと引きあげていきました。けれども、あとからついていったお公卿さまが、しきりに首をひねるのです。
まめやかにちょこちょこと従いながら、いとものどかにひねり出したものでしたから、いつものように早くも見つけて、何か名人がきき尋ねるだろうと思われたのが、これはまたおよそ変わったことがあればあるもので、珍しく伝六がいたって兄分顔に気取りながらいいました。
「みっともねえな。何がふにおちねえんだい」
「でもね――」
「なんだよ」
「あれほどのだいそれた[#「だいそれた」は底本では「だれそれた」]まねをしたっていうのに、なんだってまた尾州さまは、おらのだんなに手入れすん
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