右門捕物帖
七化け役者
佐々木味津三
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)勃発《ぼっぱつ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)前代|未聞《みもん》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)なんだと※[#疑問符感嘆符、1−8−77]
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1
――ひきつづき第十六番てがらにうつります。
事件の勃発《ぼっぱつ》いたしましたのは、五月のちょうど晦日《みそか》。場所は江戸第一の関門である品川の宿、当今の品川はやけにほこりっぽいばかりで、さざえのつぼ焼きのほかは、あってもなくてもいいような、場末の町ですが、このお時代の品川となると、いろいろな点から、なかなかふぜいのあったもので、上方から下ってきた旅人には、ほっと息をつくやれやれの宿、江戸をあとに旅立つ者には、泣きの涙の別れの関所――。古い川柳の中にもこんなのがございます。
「品川で遺言をする伊勢《いせ》参り――」
だから、ご一新前までは、やれやれそば屋、別れ茶屋などといった看板の家
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