じが、さっき八丁堀で取り逃がした当の本人でござんすよ」
「えッ※[#疑問符感嘆符、1−8−77] ――そうか、髪の毛と黒ねこがあの京人形に結びつくたあ、いかなおれも、にらみがつかなかったな。よしよし、ここまでもう押えりゃ、どうやらちと右門流を大出しにしなきゃならねえようだから、ひとつ江戸のごひいき筋をあッといわせてやろうよ。それにしても、ねこと蛸平をいっぺんにここで押えるたあ、少しばかりおてがらすぎるな」
「いいえ、てがらでもなんでもねえんですよ。ねこを見張ってだんなのあとからついてめえりましたらね、やにわとこいつめがニャゴニャゴいって、どうしたことかここの二階へ駆け上がってきたんで、逃がしちゃならねえと追っかけてきて押えたところへ、あの蛸平坊主めがあとから裏のへいを乗りこえやがって、逃げこみましたんで、ついでにちょいとからめとってやったんですよ」
事がここにいたって、がぜん予想外の大場面に展開したものでしたから、では、そろそろ右門流に取りかかろうといわぬばかりで、いと涼しげに微笑すると、まず吉原|幇間《ほうかん》のところへ、物静かな尋問が飛んでいきました。
「神妙に申し立てろよ。な
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