ゃ口を割るように、早いところ締めあげておしまいなせえよ」
「だめだよ」
「ちぇっ、べっぴんだから、おじけが出たんですかい」
「うるせえな。拷問火責めでものをいわするおれさまだったら、だれも右門党になんぞなっちゃくださらねえや」
いいつつ、[#「、」は底本では「、、」]微笑しながら、じろじろとへやのうちを見ながめていましたが、ふとそのときわれらの捕物名人の目についたものは、そこの壁に張られてあった次のごとき張り紙です。
[#ここから1字下げ、折り返して2字下げ]
「、座員、堅く厳守すべき条々のこと。
一、間食い、ないしょ食いいたすまじきこと。
二、夜ふかしいたすべからざること。
三、男員いっさい女座員のへやに立ち入るまじきこと、ならびにまた女座員、いっさい男員べやを犯すまじきこと。
[#ここから3字下げ]
以上の条々忘るべからず――娘かるわざ一座座長」
[#ここで字下げ終わり]
――だのに、なんという皮肉なことでしたか、それともまぬけのまぬけわざというべきでしたか、ちょうどその第三条の男員いっさい女座員のへやへ立ち入るまじきことと書いてある文句の下の、手梱《てごおり》、手箱、衣装なぞ
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