−3−28]――主と寝ようか五千石取ろか
なんの五千石主と寝よ。
[#ここで字下げ終わり]
いっしょに梅丸竹丸が各自一振りずつ大きく腰を振って、商売なれしたもののごとくに、ぱッぱッと白い粉末を散らしながら、おのおのそのたびの裏に塗りつけたものは、竹棒をすべらぬための用意にと、先ほど右門がいった石灰でした。と見るまに、両名は別々のはしごを伝わりながら、そこの天井から向こうとこっちにぶらさがっている二本の竹棒の上にふんわり身軽くめいめいが乗り移ったと見えましたが、右手《めて》に扇子、左手《ゆんで》に唐笠《からかさ》を各自巧みにさッと開いて、下座の鳴り物調子に合わしながら、主と寝ようか五千石取ろかを、すべすべとした細い竹棒の上でいともあざやかに踊りつつ、手に汗するようなあぶない棒渡りの空中芸を競演しだしたものでしたから、伝六はむろんのことに、お公卿《くげ》さまの善光寺辰までが、のっぺりとのどかな顔にぽかんと大きく口をあけながら、すっかり二つの妖花《ようげ》の空中踊りに見とれてしまいました。
けれども、わが捕物名人ばかりは、およそこういうところが品のできの違うところです。ふたりの手下
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