りしていておめえも化かされるなよ。いつだっても、このとおり、何をやぶからぼうにいいだすかわからねえのが、たった一つだんなの悪い病なんだからな、おめえもそのつもりでいるがいいぜ……だが、それにしてもまあ、ほんとうに、ちぇッ、ていいたくなるね。だんなのあのやにさがり方をよく見ろよ。平生は腹がたつくれえお堅いが、奇態とこういうふうないか者の娘っ子となるてえと、じきにだんなの風向きが変わるんだからな。どんなべっぴんどもだか知らねえが、たかの知れた奥山のやせ芸人じゃねえかよ。こんなのんきなまねをする暇があったら、はええことネタをあげちまえばいいものを、ほんとうにじれじれするじゃねえか。おめえまで誘い込まれて、ぽかんと口なんぞあけて見とれていたら、根こそぎ鼻毛を抜かれちまうぜ」
しきりとあいきょう者が一日の長を誇って、いやに兄分風を吹かしているのを、右門はくすくすと笑いわらい聞き流しながら、黙念としてしたくの整うのを待ちました。
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やがてのことに、まず舞台にはあかあかと何本かの燭台《しょくだい》がともされて、こんなときでもないときに、変わり種の三人ばかりなお客でも、やはり芸とな
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