、まさしく右門を目ざしての手裏剣でしたから、ちょっとけしきばんで立ち上がろうとすると、間をおかないで二本めが、あやうく左をかすめながら、プツリ、またうしろのふすまに突きささりました。といっしょに、三本めの短いドスがかわすあとからおそいかかって、間一髪のところを上にそれつつ、プツリとまたふすまに突きささりましたものでしたから、うろたえたのは伝六で、なにはともかく正体を見届けなくてはとばかり、あわてて短檠《たんけい》をふりかざしながら、庭先へさし出そうとすると――
「兄貴! いらねえよ! いらねえよ! ここにりっぱなちょうちんがあるじゃねえか!」
 新参の配下善光寺辰が、いまぞ初てがらといいたげに急いで止めて、希代な目ぢょうちんを光らしながら、じっと庭の向こうを見かすめていた様子でしたが、おどろいたもののごとく叫びました。
「だんな、だんな! くせ者は十五、六ぐれえの小僧っ子ですぜ!」
「えッ、少年かッ。なんぞ子細があろう! 捕えろッ、捕えろッ」
 いう間も五本七本と、矢つぎばやに小柄《こづか》の雨を集中させていましたが、それを右へ左へあざやかに、ひらりひらりと右門が身をかわしながら、激し
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