ところへわざわざ仲間入りするんですから、この新しいわき役なる者がまた尋常一様の男ではないので。前回の指切り騒動がかたづきましてから日にしてちょうど十六日めの夕景でした。朝のしたくはいうまでもないこと、夕げの用意、床のあげおろし、およそ右門の身まわりに関する女房役は、いっさいがっさい伝六が男手一つで切り盛りするならわしでしたから、もうそろそろやって来なければならない刻限でしたが、陽気のかげんで、はずみがつきすぎましたものか、いっこうにあいきょう者が姿を見せませんので、しかし、根がそういうことにいたって大まかな名人のことでしたから、あかりをつけるのもめんどうとばかり、そこの座敷のまんなかにごろりと大きく寝そべりながら、もぞりもぞりと、くらやみであごのまばらひげをまさぐりつづけていると、まさにそのとたんでした。裏木戸のあたりとおぼしき方角にあたって、不意にことりと、だれかうかがい寄りでもしたようなけはいがありました。伝六ならばいつやって参りますときでも、ガラガラとがらがらへびのようにからだじゅうを鳴らしながらやって来るのが普通でしたから、はてなと思いましてきき耳を立てていると、ところがどうし
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