がら、いよいよこれより右門流の水ぎわだった捕物にかかろうといわんばかりで、筑波《つくば》おろし吹きしきる大江戸の昼日中町を、神田連雀町目ざして駆けさせました。

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 目じるしが火の見やぐらというのっぽの背高でしたから、に組の火消し番所は労せずしてすぐと見つかりました。火消し番所が見つかった以上、鳶頭《とびがしら》の金助はさらに手間暇を要せず居どころが判明したものでしたから、右門はまず在否を尋ねました。
 しかし、居合わした若い者の答えによると、金助は一度帰宅したが、その足でただちにまたいずれかへ他出したということでありました。だから、普通の者ならば、少しうろたえて他出先とか立ちまわり先を、目の色かえながらききただすところでしたが、しかるに右門は、いたっておちつきはらいながら、さようか、では、引き揚げようとばかりに、ろくろく出先もきこうとしないで、さっさと帰りだしたものでしたから、いつもながら、ことごとく首をひねってしまったのはおしゃべり屋伝六です。
「ね、どうしたんですかい。野郎品物を持ってどこかへこかしに行ったとするなら、すぐと足を洗わなくちゃなりませんが、いやにおちつ
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