。さッ、大急ぎに行って、あの源空寺の住職をしょっぴいてこいッ」
「え※[#感嘆符疑問符、1−8−78] 不意にまた何をおっしゃるんですか。源空寺の和尚《おしょう》に何用があるんですかい」
「どじだな。きさまの耳はどっち向いてるんだ。うちのお師匠さまはときおりないしょで生臭を食うと、たった今、この黙山坊がはっきりといったじゃねえか。何宗であるにせよ、仏にかしずいている身で、生臭なんぞ用いるやつにろくなものはねえや、ひとっ走りいってしょっぴいてこい!」
「なるほどね。こうなりゃ腹の減るのも見捨てたものじゃねえや。じゃ、寺社|奉行《ぶぎょう》さまのほうへも渡りをつけてから行くんですね」
「そんなやかましい手続きはいらねえや。ちょっとお尋ねしたいことがあるからといって、じょうずにおびき出してこい!」
がってんだとばかりにしりからげて走りだしたものでしたから、もうここまで道がひらけていけば、あとは、右門の国宝ともいうべき、鋭利|犀抜《さいばつ》なる手腕のさえを待つばかりとなりました。
3
かくして、待つことおよそ小半とき――。
むろん、もう伝六もこういうことには相当場数を踏ん
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