者から、仲間はずれの形となってしまいました。
だから、わけても右門思いのおしゃべり屋伝六が黙っていられるわけはないので、しかし人前でしたから、小さな声でいったものです。
「ね、だんな、きょうは地獄のおえんまさまでさえもがくぎ抜きに錠をおろしておくんですぜ。ですもの、いくらむっつり屋のだんなだって、きょうぐれえはもっとおもしろそうな顔をしたらよさそうなもんじゃござんせんか」
けれども、右門は、ふんともうんとも返事一つせずに、ただむやみとお料理の品ばかりをせせっていたものでしたから、こうなるといっそうやきもきするのがまた伝六の性分で、とうとう大きな声を出していってしまいました。
「ほんとうに、いやんなっちまうな。いくら木魚庵だからって、これじゃまるでお通夜《つや》に来たようなもんじゃござんせんか」
すると、偶然というものはまったくどこにあるかわからないものですが、伝六のはからずもいったそのことばでふと思い出したように、隣の席の者が声高に向こうの相手へ話しだしました。
「そうそう、お通夜といえば、さっき出がけにお番所へ、妙な訴えをもってきたお坊さんがあったぜ。なんでも、小石川の仁光寺《
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