さんにおれが牛若丸になり、将軍さまのご面前で踊るてはずになっているということだから、おれはそのとき毒をあおって、りっぱに死んで見せらあ。てめえたちへのつらあてに、死んでみせらあ。そうすりゃ騒ぎも大きくなって、おれがなんで死んだかもお調べがつき、そのうちにはきさまらのやっていることも、ぼちぼち世間に知れるにちげえねえんだからな。そうすりゃ、てめえたちの塩首が獄門にさらされる日もそう遠くはあるめえよ。どうだい、おどろいたか、ざまみろ」
まことに意外以上の意外というべきで、いずれにしてもこの書き置きが糸屋の主人自身したためたものなることはいずれの点からいっても一目|瞭然《りょうぜん》であり、しかもそれが書かれてある文言から判じて何者か仲間の一団に対するつらあての計画的な毒薬自殺と判明したものでしたから、さすがの右門もあまりの意外にうなってしまいました、伝六の肝をつぶしてしまったことはまた数倍で――。
「なんのつらあてで死んだか知らねえが、世の中にはずいぶん変わったやつもあるもんだね。将軍さまの面前でわざわざ毒をなめやがったのもしゃれているが、書き置きを笛の胴の中にしまっておくなんぞは、もっ
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