然とんきょうな叫びを発しました。
「ね。だんな! だんな! この笛の中に、おかしなものが詰まっていますぜ!」
気を腐らしていたやさきに耳よりなことばでしたから、はね起きざまに奪いとってあんどんにすかしてみると、なるほど伝六のいったとおりです。紙切れの巻いたものが、笛の胴の中に詰められてありましたので、胸をおどらしながら火ばしの先でつつき出してみると、いっしょに右門も伝六もあっと息をのみました。紛れもなく、その紙切れは書き置きだったからです。あまりじょうずな手跡ではなかったが、書き置きの事――と初めにはっきり断わって、次のような文句が乱暴にこまごまとしたためられてあったからです。
「やい、野郎たち、よくもよくもおれを裏切りやがったな。そんな古手でうぬらばかりうまいしるが吸われると思うとあてが違うぞ。くやしくてならんから、いっそのことに訴人してやろうかとも思ったが、それじゃおれの男がすたるから、それだきゃがまんしておいてやらあ。そのかわりに、ただじゃおかねえからそう思え。おれはてめえたちへのつらあてに死んでやるんだ。それもただのところで死ぬんじゃねえんだぞ、さいわい聞きゃ、あさっての山王
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