、あわれにも小動物はきりきりとねずみ舞いしながら、さっき糸屋の若主人が陥ったと同じように、たちまち水あわを吹いてその場に悶絶《もんぜつ》してしまいましたものでしたから、同時に右門の口から裁断の命令が発せられました。
「事ここにいたっては、祭礼中といえども容赦はならぬ。吟味中|入牢《にゅうろう》を申しつくるによって、これなる屋台にかかわり合いの町人一統、神妙におなわをうけいッ」
 これには町内の者残らずが一様にあわを吹かされてしまいましたが、しかし右門の剔抉《てっけつ》したとおり、糸屋の若主人の急死が、のぼせたんでもなく、てんかんでもなく、まぎれなき毒殺であったとわかってみれば、向こう三軒両隣の縁で、いまさらのがれるわけにもいきませんでしたから、しぶしぶながらもおなわをちょうだいいたしまして、町内三十七人の者残らずが、お組|頭《がしら》を筆頭に、ぞろぞろとその場から八丁堀の平牢《ひらろう》にひったてられていきました。
 そこで、型のごとくにむっつり右門の疾風迅雷的な行動が、ただちに開始される順序となったわけですが、しかるに、今度ばかりは大いに不思議でありました。その日のうちにも吟味にかけ
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