り昼寝もできるというものだ。じゃ、おれはこれからお小屋にかえってひと寝入りするからな。また、晩にでもなったら遊びにきなよ」
しかも、人を食ったあいさつをしたばかりではなく、ほんとうに八丁堀めがけてさっさと帰りかけたものでしたから、伝六のかんかんにおこってしまったのはむろんのことです。
「えッ。じゃ、なんですかい。だんなはあっしにこれまで気を持たせておいて、あんたには一の子分がせっかくてがらをしようていうのに、お自分は高見の昼寝で、あっしなんぞは見殺しになさるご了見でげすかい」
けれども、右門はさようとも、いいやともいわずに、さっさと引き揚げていってしまったものでしたから、かんかんどころか、蛸《たこ》のようになって伝六があびせかけました。
「じゃ、もうようござんす! あっしも江戸の岡《おか》っ引《ぴ》きだ、手を貸してやろうっていったって頼むことじゃねえんだから、あとでじだんだ踏みなさんなよ!」
むきになって下谷を目がけて駆け去りましたが、それすらも右門には耳にはいったかどうか疑わしいくらいのものでした。
2
まことにこれは、伝六でなくともかんかんになるのは当然なこと
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