かい手ばかりがお屋敷を賜わっていますゆえ、例のつじ切りめ腕ききばかりの藩士をねらう由承りましたから、かく宵《よい》のうちから一団となって、このかいわいを警固中にござります」
「それはご殊勝なこと、ずいぶんとごゆだんめさるなよ。では、ごめん――」
 いうと、右門はことさらまた雪駄の音を例のように高めながら、ちゃらちゃらと向こう町のやみの中へ消え去ってしまいました。だが、まことに不思議です。二、三十間やっていくと、今まで高かった雪駄の音を突然ころして、ぴたりとそこの築地《ついじ》べいに平ぐものごとく身をよせてしまいましたので、伝六はいぶかって、首をちぢめながらささやきました。
「ね、――あいつが出たんですかい?」
 しかし、右門はひとことも答えないで、じっと同じかっこうをつづけていたようでしたが、それから五分とたたないまもなくでした。不意に、やみの向こうの屋敷の中から、けたたましくわめき叫ぶ声が聞こえました。
「おのおのがた、お出会いそうらえ! 例のくせ者が押し入ってござるぞ! お早くお出会いそうらえ!」
 それを聞くと、右門ははじめてわが意をえたりというように、ぱんぱんと手についた土ほこ
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