なにかでか物[#「でか物」に傍点]の事件が起きたな、というけはいを見てとったものでしたから、こうなるとむっつり右門はつねにそうでありましたが、すべての態度がもはやまったく疾風迅雷という形容そのままでした。かれは、きょとんと目をひらいて戸惑っている伝六へ、しかるようにいいました。
「きさまだって、あばたの敬四郎がこのごろおれと功名争いしているくらいなことは知ってるだろう」
「え! あっ! そうでしたかい。じゃ、今のあいつの様子で、事起こるとにらんだのですね」
ひょうきん者のおしゃべり屋ではありましたが、そこはやはり職業本能で、右門のそのひとことで、ぴりっと胸にこたえたものがあったのでしょう。ところへ、さながらおあつらえ向きのように、今あわてふためいて自分のお小屋のほうへ駆け込んでいった相手の敬四郎が、大急ぎで狩り集めたらしく、配下の手下小者を引き具して、どやどやと血相変えながら出てまいりましたので、いよいよ伝六にも事の容易ならぬけはいが感得できたものか、もうあとはいっさいが目まぜと目まぜと、それからましらのごときすばしっこさのみでした。むしろ、こうなると、がってんの伝六とでもいうほうが
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