ゃなくて、つまり、この事件の因縁話になるところだと思うんでがすがね。そら、例の目が、左の目玉が、あの生首の顔のように、一方つぶれていたというんでがすよ。だから、ははんそうか、さてはだれかその用人の身内の者がお手討ちの恨みを晴らすために、あんな左の目のない生首をこしらえて、味なまねしやがったんだなと思いましたからね、すぐにおやじへきいたんでがすよ。その用人にゃ、せがれか、甥《おい》か、血筋の者はなかったかってね」
「あったか!」
「大あり、大あり。二十五、六のせがれで、飲む、打つ、買うの三拍子そろったならず者があったというからね、あっしゃもうてっきりそいつのしわざだと思うんでがすがね」
「ちげえねえ」
 その報告が事実とするなら、まさにこれは「ちげえねえ」にちがいありますまい。手討ちにされた用人の片目であったところから思いついて、生首の左の目玉ばかりを同じようにくりぬき、これでもかこれでもかと、いやがらせにあんなまねをしたにちがいないので、それにしては今までの苦心の大きかった割合に、あまりにもてっとり早く下手人のめぼしがつきすぎたものですが、しかし、だいたいのほしがついた以上はもう猶予が
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