きあげたな」
「え? きさまもというと、じゃ、だんなもほしを拾いましたね。そうと決まりゃてっとり早くいいますがね。ちょうどゆんべでさ。あれからうちへけえったんですが、あばたのだんなにしてやられるかと思うと、いかにも業腹で寝られませんからね、当たって砕けろと思って、実あこっそり小田切のお屋敷へ様子見に出かけたんでがすよ。するてえと、裏口の不浄門がこっそりあいて、中間かなんかでがしょう、いいかげん年寄りのおやじが、とくりをさげて出てきたじゃごわせんか。こいつ寝酒の買い出しだなとにらんだものでしたから、あばたのだんなの手下どもが居眠りしてたのをさいわい、うまいことそのおやじを抱き込んで、二、三本もよりの居酒屋でふるまいながら、すっかりうちの様子聞いちまったんでがすよ」
「なに、うちの様子? そいつぁおめえに似合わないてがらだが、ほしゃどんな筋だ」
「どんなにもこんなにも、つまり、そのほしが下手人でがさあ。ね、そのおやじのいうことにゃ、ついこの一カ月ばかりまえに、小田切のだんなのうちで長年使われていた用人がお手討ちになったっていうんでがすよ。ところが、その首にされた用人の顔てえものがただの顔じ
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