る者によって、あの疑雲に包まれている秘密の殿堂をあばこうという方法で、第二は、ほかならぬあばたの敬四郎に向かって間者か付き人かを放ちながら、その手中に納めている材料を巧みに盗みとろうという手段――。そこで、あらたに起こって来る問題は、一と二とのそのいずれを選ぶべきかという点でありますが、いうまでもなく二の方法は一の方法よりもたやすいのです。間諜間者《かんちょうかんじゃ》を放つというような問題になれば、何をいうにもそれが本職の人たちなんだから、たとい鈍感なることおしゃべり屋の伝六のごとき者を使ったにしても、一の方法のなにほどか多分の手数を要するに反し、二の方法は少なくも半分の手軽さで行かれるわけでした。だから――だが、そのたやすい第二の方法には、人の苦心を盗み取るということで、卑しむべき卑劣さがありました。少なくも二本差している者の面目上からいって、恥ずべき卑劣さがありました。卑劣や、ひきょうは、断わるまでもなく、またいうまでもなく、われわれの嘆賞すべきむっつり右門の断じて選ぶべき道ではない!
「よしッ。おれはあくまでもおれひとりの力によって、正々堂々と天地に恥じぬ公明正大な道を選んでや
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