てまいりましたが、その報告はこれも同様、手がかりとなるべきものはなに一つなく、やはり敬四郎配下の者が、すでにひと足先に回っていたということだけがわかったばかりでしたから、右門はいよいよがっかりとなって、黙然と腕こまぬきながら、今後いかにすべきかその方法について、ひたすら考えを凝らしました。
だが、どれだけ考えてみても、この三日前後に江戸において行き方しれずになった者もなく、首を失った者の届け出もないとすれば、けっきょく探索の中心点を疑問の旗本小田切久之進において、事件の糸口をほぐし出すべく、詳細な犯罪調査と、同時に久之進その人の身がら調査を行なうよりほかには、もう残された方法がないわけでしたから、としたならば、いかにしてその二つの調査を進めていったらいいか?――右門は考えの中心をその一点に集めて、いかにすべきかの方法について、くふうをこらしました。その結果として案出されたものは、次の二つでした。知らるるとおり、正面から当たったのでは面会をさえも拒絶しているんですから、いずれもからめてから糸をほぐしていこうという方法でありましたが、すなわち第一は、なんびとか久之進一家の内情を熟知してい
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