らいたいと思っているし、そのうち印刷物もできるから、それについてみっちり研究してもらうんだな。しかし、おそらく実際に生活をはじめてみないと、ほんとうのことはのみこめないだろうね。」
「何だか、むずかしそうですわ。」
「むずかしいといえは非常にむずかしいし、平凡《へいぼん》だといえばしごく平凡だよ。」
「一口にいって、どんなご方針ですの?」
「友愛感情に出発した共同生活の建設とでもいったらいいかと思っているんだ。しかし、こんな生煮《なまに》えの言葉をそのまま鵜呑《うの》みにされても困る。それよりか、これまでの学校でやって来た白鳥会の気持ちを、塾の共同生活の隅《すみ》から隅まで生かす、といったほうが呑《の》みこみやすいかね。」
「そういっていただくと、あたしたちにもいくらか自信が持てそうですわ。ねえ、本田さん。」
「ええ、ぼく、先生のお気持ちはよくわかるような気がします。」
次郎は頬《ほお》を紅潮させてこたえた。
「あんまり自信をもってのぞんでもらっても困るよ。白鳥会の精神がいいからといって最初からそれを押《お》しつける態度に出たら、かんじんの精神が死んでしまうからね。お互《たが》いが接
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