ぼり、その協力によって組織を作りあげていくよりしかたがない。そこで、これからのここの生活にとって非常に大切なのは創造の精神である。諸君の中には、これまで、伝統や規則や、特定の人の指揮《しき》命令に従って行動するようにのみ訓練され、共同生活訓練といえば、だいたいそうした訓練だと心得ている者があるかもしれないが、ここでの生活はそれとは全くちがわなければならない。全くと言っては少し言いすぎるかもしれないが、ともかくも、まずめいめいに自分で考え、自分で判断し、その考えなり判断なりをおたがいに持ちよって、それを取捨《しゅしゃ》し、選択《せんたく》し、総合して行くのでなければならない。共同生活にとって、遵奉《じゅんぽう》とか服従とかいうことのたいせつなことはいうまでもないが、ここでは守るべき法も、従うべき権威《けんい》もまだできていないのだから、もしそれが必要なら、まずおたがいの努力によってそれを創《つく》りあげていかなければならないのである。伝統や、すでにできあがっている規則や、だれかの指揮命令で動くように慣らされた人にとっては、随分勝手がちがうだろう。何だかたよりないという気がするかもしれない
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