である。
以上が、第五部出版|遅延《ちえん》の言訳である。
なお、第六部はどうするか、ときかれても、それは第五部の場合のこともあり、確約は差控《さしひか》えたい。ことに、私ももう七十歳をこしてしまったことだし、生命に別条がないとしても、脳味噌《のうみそ》の硬化《こうか》はさすがに争えないものがあるのだから、めったな約束《やくそく》はしない方がいいだろうと思うのである。ただ私の希望だけをいうならば、戦争末期の次郎を第六部、終戦後数年たってからの次郎を第七部として描《えが》いてみたいと思っている。むろんすべては運命が決定することであり、私自身の意志は、次郎がかれの日記に書いているように、運命にしめつけられた、せまい自由の範囲《はんい》においてのみ動くことを許されるであろう。
[#天から3字下げ]一九五四年三月四日
底本:「次郎物語(下)」新潮文庫、新潮社
1987(昭和62)年5月30日発行
入力:tatsuki
校正:松永正敏
2006年3月4日作成
2007年11月7日修正
青空文庫作成ファイル:
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